風疹の拡大防止策として中高年の男性を対象に実施している無料の抗体検査を受けた人は約337万人で、目標の4割未満に低迷していることが23日、厚生労働省の調査で分かった。新型コロナウイルスの流行で、医療機関に行くのを控えたことが原因とみられる。国は本年度末までに約920万人に検査を受けてもらい、免疫のない人にワクチンを打つことで抗体保有率を90%以上に引き上げる目標を掲げているが、達成は困難な状況だ。
風疹は、妊婦が感染すると赤ちゃんが難聴や心臓病などの障害が出る先天性風疹症候群(CRS)になる恐れがある。放置すると再び風疹が流行してCRS発生が増える懸念があるため、厚労省は当初、本年度末で終了する予定だった事業を延長する方針。
風疹は、発熱や発疹、リンパ節の腫れといった症状が特徴の感染症で、せきやくしゃみを介して感染する。無症状でも人にうつすことがあり、予防のためにはワクチン接種によって社会全体で感染が広がりにくくなる集団免疫を獲得することが重要とされる。
国内では2018年から19年にかけて計5千人を超える感染者が報告される流行が発生。CRSの赤ちゃんも4人報告された。
ワクチン接種の機会がなかった40~50代の男性の抗体保有率が低いことが一因と考えられたため、厚労省はこの世代の男性にワクチンを接種することを決定。19年から3年間、抗体検査の無料クーポン券を配り、抗体がない場合は原則無料で接種が受けられる機会を提供した。職場の健康診断で検査を受けられる環境も整備した。
厚労省は当初、抗体保有率を90%以上に引き上げるためには抗体検査を約920万人に行い、接種を約190万人に実施する必要があると見込んでいた。しかし21年7月までに検査を受けた人は約337万人、接種を受けた人も約71万人にとどまっている。
二度と流行させないで
先天性風疹症候群(CRS)の子を産んだ母親らでつくる「風疹をなくそうの会」の共同代表、可児佳代さんの話 妊娠中に風疹にかかり、生まれた長女には心疾患などの障害があり18歳で亡くなった。新型コロナウイルス感染症の情勢を踏まえると、抗体保有率の目標達成時期の後ろ倒しはやむを得ない。だが、二度と風疹を流行させないために、政府は目標値に達するまでワクチン接種を継続すべきだ。おなかの中の命を守り、女性が安心して妊娠、出産できる社会になってほしい。