潮騒を乗せて吹き寄せる海風が、イナウ(木製の祭具)を揺らす。

 北海道浦幌町。海岸に臨む丘陵で、ラポロアイヌネイション(旧・浦幌アイヌ協会)が8月、カムイノミ・イチャルパを執り行った。神に祈り、北海道大や東京大などから返還されたアイヌ民族の遺骨103体を供養する儀式だ。大学は研究目的でコタン(集落)の墓地から遺骨を持ち去り、研究室に放置していた。

 「人間の魂や尊厳を傷つけ、何と残酷なことをするのか」。儀式を見守った宇梶静江(88)...