地盤沈下で亀裂が入った住宅の基礎部分=出雲市西園町
地盤沈下で亀裂が入った住宅の基礎部分=出雲市西園町
地盤沈下で亀裂が入った住宅の基礎部分=出雲市西園町

 出雲市の神戸川下流で新たな堤防を築いたことに伴う地盤沈下は、20年前ごろから住民の間で認識されていた。ようやく約260億円かけての抜本的な対策工事のめどが立ったが、この間に家屋被害もじわりと広がった。対策工事の概要が明らかになった25日、住民からはこれ以上の被害が出ないよう求める声が出た。 (三原教史、月森かな子、平井優香)

 下流部の右岸で営農する西園町の農業小川修さん(68)宅では、10年以上前から納屋の地盤沈下が続いている。わずかではあるが建物が傾き、壁のコンクリート部分に細かいひび割れが見られるほか、戸の立て付けが悪く、閉まりにくいという。

 国土交通省出雲河川事務所によると、地盤沈下による家屋の被害が初めて報告されたのは2002年。被害家屋への補償はその都度対応してきた。しかし、地盤沈下の要因が判明したのは、今年に入ってからだった。これまで橋などの公共インフラだけでなく、家屋の被害は、右岸4・7キロ、左岸2・8キロにわたる130戸程度に及んだ。

 しかも、沈下を引き起こした粘土層が地中深くにあり、対策工事は技術的に難しく、これまで着手できずにいたという。ようやく地中45メートルに鋼矢板を埋め込む試験工事で実効性を確認し、着工のめどが立ったという。被害確認から長い年月を要したことに対し、同事務所の大賀祥一副所長は「さまざまな検討はしたが、なかなか具体的な対策を見いだせなかった」と話した。

 小川さんは「矢板の効果がどれだけあるかは分からないが、対策をやらなかったら、また地盤が下がる。もう沈下せんようにしてもらいたい」と注文した。

 問題が放置されていたわけではないが、根本的な対策選定に時間を要したことで、不便を感じた住民は少なくない。

 家の壁や柱と、基礎のつなぎ目にひびが入ったという、西園町の農業男性(64)は「沈下は今も続いている。原因の沈下が止まらないので今まで修理に手を付けられなかった。対策が始まればようやく家の補修ができる」とした。

 神戸川の築堤や拡幅は、斐伊川水系の治水3点セットの要で、豪雨時に斐伊川から神戸川へ水を流す「斐伊川放水路」の整備に伴うもので、必要な工事だったとはいえ、地質の調査を綿密にできなかったのかとの疑問は残る。

 地盤沈下の対策選定に関わる松江工業高等専門学校の河原荘一郎教授(土質工学)は、5月に現地を訪問し、沈下の影響で段差ができた橋などを視察。「(築堤時に)粘土層についてもう少し慎重に調査すべきだった」と指摘した。