これまでの衆院選では地方政策が焦点の一つになってきた。例えば、2009年の衆院選。その直前まで、国の直轄事業費の一部を地元自治体が負担する制度を「ぼったくりバー」などと、当時の橋下徹大阪府知事らが強く批判していた。

 「公共事業はばらまき」というイメージが広がり、対応が後手に回った自公政権は、「地域主権」「コンクリートから人へ」を掲げた旧民主党に敗れた。知事らの発信力を甘く見たことが一因とも言えるだろう。

 これに対抗し、12年に政権を奪還した自民党は、その2年後、当時の安倍晋三首相が「魅力あふれる地方の創生は内閣の最重要課題だ」として地方創生を打ち出した。14年、17年の衆院選では「地方が主役の『地方創生』を実現」「地方創生で、活力ある元気な地方をつくります」などと、地方側が受け入れやすいキャッチフレーズを唱え勝利している。

 さらに、国と地方が対等の立場で話し合う協議の場で出てきた全国知事会など地方側の提案の多くを受け入れてきた。国と地方の間に対立点を意図的につくらないように安倍政権が腐心したと分析できる。むろん、野党も知事らを敵に回したくないはずだ。

 結果として、与野党とも地方に関連する政策の違いがなくなってきた。その証拠に今回の衆院選に向けて知事会は「新たな日本の創生に向けた提言」として52項目を各党に申し入れ賛否を聞いたが、自民党は全項目に賛成、立憲民主党など主要政党もほとんど賛成と差はあまりなかった。

 理由として、第一は「闘う知事会」を掲げ国と対決姿勢を示してきた知事会が近年は、政府と争うような派手なパフォーマンスを控え、実務的な活動を通じて実を取る戦略を進めてきたことを挙げたい。これによって、政府全体の取り組みの中で地方政策が目立たなくなり、各党が違いをアピールする場ではなくなったと分析できる。

 第二は、国が行う地方政策の行き詰まりがある。地域主権や地方創生を進めれば活性化するといった訴えがこれまでは集票につながった。だが、現実には、安倍政権があれだけ強く打ち出した東京一極集中の是正は全くできなかった。人口減少も地方の衰退も続いている。「これさえすれば」というような、地方に「夢」を売る手法を使える環境にはない、と指摘したい。

 今後の地方政策は、人口の減少、高齢者の増加を大前提に組み立てることになる。そうなると、水道供給や道路管理など行政サービスのコストを下げるため、地域の中心に集まって住む「コンパクトなまちづくり」や「1人暮らしの高齢者への対応」などが中心となる。国民に訴えやすいキャッチフレーズ型の政策をつくり出すことは、より難しくなっていくだろう。

 一方、新型コロナウイルス感染症では、多くの自治体が独自の対策を実施し、国のコロナ対応にも生かされた。自治体が先進的な政策を自らの判断で導入できれば、自治体間の競争が生まれ、よりよい地域づくりにつながるはずだ。

 政府はこうした、自治体が健全な競争ができる環境づくりに力を入れてほしい。そのためには、権限、財源で自治体の政策を縛るのではなく、より自治体の自由度を上げることを優先すべきである。