新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種について協議する鳥取県日野町の職員。雪深い地域では足元の安全など懸案が多い=日野町根雨、町役場
新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種について協議する鳥取県日野町の職員。雪深い地域では足元の安全など懸案が多い=日野町根雨、町役場

 新型コロナウイルスワクチンの3回目接種を控え、インフルエンザワクチン接種との兼ね合いに山陰両県の市町村が頭を痛める。早ければ来年1月にも高齢者向けの3回目接種が始まり、二つのワクチンの接種時期が重なって「打ち手」不足や打ち間違いが生じかねないからだ。山間部では降雪対策も課題で、接種会場への移動が高齢者を危険にさらしかねないとみて、3月以降の接種開始を検討する自治体も出てきた。 (多賀芳文)

 17日、厚生労働省は全国の自治体への説明会で、3回目接種について、2回目接種からの間隔を「原則8カ月以上」とするよう求めた。山陰両県では早ければ12月に医療従事者、来年1月に一般の高齢者向けに接種が始まる計算だ。

 どの市町村も気をもむのは二つのワクチン接種を並行して進められるか、だ。

 鳥取市保健医療課の浜田寿之課長補佐は医療従事者の協力の取り付けが課題とみる。インフルワクチン接種後2週間はコロナワクチンが打てないため日程調整や打ち間違い対策も必要。「これから医師会にお願いするが、先生方も不安があると思う」と推察する。

 松江市新型コロナウイルスワクチン接種実施本部の狩野勝総務・広報グループリーダーも同様の懸念があるといい「打ち間違いへの注意を呼び掛けている最中」と明かす。

 山間部の自治体は降雪も悩みの種。

 鳥取県日野町健康福祉課は18日、3回目接種について課内で協議した。住田秀樹課長は「懸念は住民の移動」と話す。町は高い所で標高500メートルの地区があり、寒波が来れば一晩で50センチの積雪がある。長引けば根雪になるという。

 今冬は「ラニーニャ現象」のため冬型の気圧配置が強まりやすくなり、特に西日本を中心に平年より寒くなるとみられる。住田課長は「会場に行くために事故でも起これば本末転倒」として、リスク回避のため一般接種の開始時期の後ろ倒しを検討する。

 同じく雪深い地域がある雲南市の担当者も「1、2月の接種運用は難しい」と3月以降の接種開始を検討する。島根県飯南町は、除雪車が出動する積雪基準を下げるなどして、足元の安全確保に努める考えだ。

 島根県感染症対策室の田原研司室長は「各自治体で地理的条件や医療資源が異なるが、なるべく効果的な時期に接種できるよう工夫を働きかけたい」と話す。