米製薬大手メルクが開発した新型コロナウイルス感染症の飲み薬「モルヌピラビル」について、日本法人のMSDが3日、厚生労働省に承認申請した。審査が迅速に進められる特例承認を要望。関係者によると、厚労省は今月中旬に専門部会を開き、承認の可否を判断する。飲むタイプの抗ウイルス薬としては初の申請で、製造販売が認められれば、コロナを治療できる医療機関が広がるなど大きな変革につながる。
審査中の米国では食品医薬品局の外部有識者委員会で、効果がさほど高くない一方で安全性に不透明さがあるとの慎重意見が相次ぎ、僅差で緊急使用を支持する意見がまとまった。近く、重症化リスクのある軽症から中等症の大人の患者に限定して許可が出る見通し。
日本での審査でもどのような患者が使用の対象になるかが焦点になる。
日本政府は飲み薬の年内実用化を目指す方針を示しており、160万人分の供給でMSDと合意している。同社は新たな変異ウイルスのオミクロン株に対する効き目についても「(他の株と比べて)変化があるとは考えにくい」として、有効との認識を示している。
モルヌピラビルには体内でウイルスが増えるのを防ぐ働きがあると考えられている。臨床試験では発症から5日以内に服用を始めれば偽薬を投与したグループと比べて入院や死亡が30%減少したとする結果が報告された。当初の速報では50%減少としていたが、分析する人数を増やして下方修正した。
モルヌピラビルは英国で11月4日に世界に先駆けて承認された。ただ動物実験で胎児への影響が出る恐れが明らかになり、妊婦には推奨されていない。18歳未満も対象外となっている。
MSDのカイル・タトル社長は「自宅で服用することができるので、医療機関の負担を大幅に軽減できると期待している」とコメントしている。飲み薬はほかに米ファイザーや日本の塩野義製薬が開発を進めている。