ボクシングのダブル世界タイトルマッチ各12回戦は14日、東京・両国国技館で行われ、世界ボクシング協会(WBA)国際ボクシング連盟(IBF)バンタム級チャンピオンの28歳、井上尚弥(大橋)がIBF5位のアラン・ディパエン(タイ)に8回2分34秒、TKO勝ちした。スーパー王座のWBAは6度目、IBFは4度目の防衛。世界戦17連勝で、自身の日本最多記録を更新した。戦績は22戦全勝(19KO)。ディパエンは15戦12勝(11KO)3敗。
世界ボクシング機構(WBO)ミニマム級1位の谷口将隆(ワタナベ)は王者ウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)を11回1分8秒、TKOで破って新王者となった。戦績は18戦15勝(10KO)3敗。メンデスは3度目の防衛に失敗して18戦16勝(6KO)2敗。
▽WBA、IBF世界バンタム級タイトルマッチ12回戦
井上 尚弥 TKO アラン・ディ
(大 橋) 8回2 パエン(タイ)
53・5キロ 分34秒 53・3キロ
【評】井上尚はなかなか挑戦者を倒しきれなかったが、8回に一気に試合を決めた。7回に右フックでぐらつかせた。8回に強烈な左で、後退する相手の顔面を捉え、ついにダウンを奪う。一度は立ち上がった挑戦者を左フックでよろめかせると試合終了となった。
ガードを固めたディパエンは驚異の打たれ強さを発揮して粘ったものの、力尽きた。
期待超えられず苦笑い
世界最高峰のボクサーに求められるのは圧倒的パフォーマンスだ。「モンスター」井上尚は2年ぶりの国内試合にかかる期待の大きさを分かっていた。危なげないTKO勝ちにも喜びは少なく「時には期待を超えない勝ち方もある」と苦笑いだった。
観衆の拍手に静かに左腕を上げて入場。3回からペースを上げていく。自在にスピードを変えて前後へステップを踏み、左ジャブを的確に当てる。強靱(きょうじん)なフィジカルが必要なアッパーの連発も披露。新型コロナウイルス禍の間に磨いたパンチを浴びせ、王者の白いグローブに挑戦者の鮮血がにじんでいった。
タフなディパエンをなかなか仕留められず、ボディー打ち主体に切り替えても屈強なガードに手を焼いた。ようやく8回に左で吹っ飛ばし、左でぐらつかせて試合を終わらせた。「倒しきるまでの流れが必要。テクニックや駆け引きが大切」と、すぐに課題を挙げた。
納得のいかない試合を終え「来年の春にはビッグマッチを組んでもらうようにお願いする。自分にプレッシャーをかけて、強さを引き出していく」と鋭いまなざしになった。向かう先は他団体王者との統一戦か、スーパーバンタム級に上げての4階級制覇か。大きな夢を描いて新年に向かう。














