島根大医学部などでつくる研究グループが、生体由来の医薬品添加剤「ヒアルロン酸(HA)ナノゲル」を使い、新型コロナウイルスのワクチンを開発する用途特許を申請した。副反応の可能性が低く、抗体効果に持続性があるという。2025年以降の実用化を目指す。
化学メーカーの旭化成、京都大、三重大、長崎大と20年4月にグループを結成し、旭化成が使用権を持つHAナノゲルを生かしたワクチン開発の研究を開始。新型コロナウイルスから取り出したタンパク質の一部をHAナノゲルに入れたワクチンで効果を検証した。
マウスによる実験では、ワクチン効果が1年後も高いレベルで持続していることを確認した。現在接種されているメッセンジャーRNAワクチンは、免疫の効果を上げるために加える成分アジュバントが高熱を引き起こすとされる。今回はアジュバントなしでも効果の持続性がみられ、副反応が少ないワクチンができる可能性がある。
抗体が落ちても3回目接種で免疫が上昇し、6カ月以上維持されることも分かった。冷凍ではなく、室温での流通も視野に入るという。
研究は日本医療研究開発機構の事業採択を受けた。ワクチンの製造体制を構築し臨床試験などを経て実用化を目指す。人に投与できるHAナノゲルの安全性の検証、タンパク質の開発が課題となる。
18日に出雲市塩冶町の島根大医学部であった共同記者会見で、同大の浦野健教授(病態生化学)は「新型コロナだけではなくて、今後出てくるであろう新興感染症に対するワクチンにも対応できる枠組みをつくりたい」と話した。
(松本直也)