半開きのドアの向こうに見えた「巨匠」は、頭にタオルをかぶせ、サックスを吹き続けていた。1966年7月13日、広島市公会堂。ジャズシーンに多大な影響を与えたジョン・コルトレーンの公演を聴いた21歳の坂田明(76)は、演奏に衝撃を受け、終演後に楽屋へ向かった。「怖い気持ちもあったが、会わなければならないと思った」

 公演中と同じ熱気で、一人演奏を続ける姿に圧倒され、声を掛けることはできなかった。だが、その時、坂田は決意した。「精神と肉体の限界まで振...