中国電力島根原発2号機(中央)、左は1号機、手前は3号機=松江市鹿島町片句〓(?)
中国電力島根原発2号機(中央)、左は1号機、手前は3号機=松江市鹿島町片句〓(?)
中国電力島根原発2号機(中央)、左は1号機、手前は3号機=松江市鹿島町片句〓(?)

 中国電力島根原発2号機(松江市鹿島町片句)の再稼働の是非を問う住民投票の条例案が3日、米子市議会で否決された。東京電力福島第1原発の事故によって周辺自治体も事故リスクにさらされることが明白になり、1万3千人を超える米子市民が自らの意思を示したいと住民投票の実施に賛同する署名を寄せたが、議会の壁に阻まれた。 (取材班)

 「起立少数。よって本件は否決されました」

 3日正午前、岩崎康朗議長が採決結果を告げると、住民投票条例を直接請求した市民団体「島根原発稼働の是非を問う住民投票を実現する会・米子」のメンバーが傍聴席で一斉に肩を落とした。

 河合康明共同代表は「少しでも聞く耳を持ってほしかった。悔しい」と徒労感をにじませ、安田寿朗共同代表は「住民の意思を尊重する地方自治の本旨に違反する」と憤った。

 条例案を審議、否決した市議会の手続きに瑕疵(かし)はなかったものの、一連の対応には疑問の声が相次いだ。

 本会議採決に先立つ2日の委員会審議は、市民団体や一部市議が求めたインターネット中継や別室でのモニター傍聴といった要望が通らず、参考人の意見聴取もかなわなかった。

 本会議では、条例案に反対する市議が「原発の問題は内容が複雑であり、市民の関心に濃淡もある。住民投票に向いていない」と訴え、伊木隆司市長も「多様な意見をすくい上げるには議会での議論が最善だ」と主張した。

 しかし、成蹊大の武田真一郎教授(行政法)は「住民投票を求める運動が起きたのは、市民と市や市議会の認識に乖離(かいり)が生じたからだ」と指摘。原発と自治体の関係に詳しい東京大大学院の金井利之教授(自治体行政学)も否決理由が不十分だとして「どうして住民の声を聞いてから判断してはいけないのか。あえて聞かずに自分たちで判断する根拠を正々堂々と説明すべきだ」と批判する。

 今後、島根原発が立地する松江市や周辺自治体の境港、出雲両市でも住民投票の実施の可否を巡る議論が予定される。松江市長に住民投票条例の制定を直接請求した市民団体の秋重幸邦共同代表は「全国で唯一、県庁所在地に立地する特異な原発がここにはある。住民の意思を問う機会をつくることは重要であり、必要だ」と話した。