<短歌> 西 基宜選

大社(おおやしろ)の檜皮葺より湯気立てり光の中に時雨上がりて        出 雲 小林  香

  【評】出雲大社の拝殿、本殿の大屋根を見上げての作か。今し時雨が上がり顔を出し た小春の日光を浴び、檜皮(ひわだ)葺(ぶ)きの屋根からしきりに上がる蒸気。清浄荘厳なこの景観に、作者は「湯気立てり」と、感動を込めて詠んだ。

山吹色の羽を広ぐる秋の蝶便り待つごとポスト離れず       雲 南 多田納 力

  【評】便りを投函(とうかん)しようと近づかれたのか。蝶(ちょう)はポストに止まって飛び立つ気配...