島根県津和野町出身の文豪・森鴎外(1862~1922年)が好んだ饅頭(まんじゅう)茶漬けや刺し身の醤油(しょうゆ)煮など創作料理18種類が「鴎外食」として再現される。2022年の生誕160年、没後100年に合わせ津和野旅館組合が企画。春以降、イベントや旅館宿泊プランのメニューでお披露目する。食を通じて鴎外の知られざる一面がうかがえそうだ。 (石倉俊直)
大の甘党で甘い物をおかずにしたり、ご飯にのせて茶漬けにしたりして食べるという一風変わった嗜好(しこう)があった。医師でもあることから食に一家言を持ち、生もの全般を避けたという。長女・茉莉のエッセー「鴎外の好きなたべもの」には「独逸の衛生学にこり固まっているから、子どもに生水を飲ませるなと言い、果物も煮て砂糖をかけて食わせた」との記述がある。
鴎外食は21年夏から試作を進めており、親族の著書を基に忠実に再現する。甘党の鴎外を象徴する饅頭茶漬けは、割ったまんじゅうをご飯にのせて煎茶を掛けて味わう。刺し身の醤油煮は醤油とみりん、酒を混ぜた濃いだしを入れた土鍋を火鉢にかけ、しゃぶしゃぶのように、サーモンなどの刺し身を加熱して楽しむ。
このほか、干しアユや牛鍋、ドイツサラダといった和洋食もある。刺し身の醤油煮を試食した旅館組合の横山聡平組合長(47)=山口市=は「思った以上に絶品だった。鴎外ゆかりの地で食を楽しみながら、鴎外の知られざる一面に触れてもらいたい」とPRした。
3月19日には、津和野地区で鴎外弁当の販売と饅頭茶漬けの振る舞いを行う予定。5月上旬からは、のれん宿明月(津和野町後田)など組合加盟の宿泊施設で鴎外食が食べられる宿泊プランを始める。問い合わせは町観光協会、電話0856(72)1771。