国が求めている消防団員の報酬(年額、出動)引き上げについて、2022年度からの国の基準を全て満たす山陰両県の自治体が、島根6市町、鳥取12市町村となったことが分かった。島根では水害を経験した自治体がただちに処遇の改善を決めるなど、地域を支える消防団員への理解や期待の大きさが表れた。自治体間の報酬の多寡や支給方法には課題があり、各市町村で改善に向けて議論が続きそうだ。 (報道部・古瀬弘治)

 消防庁は昨年4月、消防団員の減少に歯止めをかけようと、全国の自治体に22年4月から消防団員1人当たりの年額報酬を3万6500円、出動報酬を1日8千円に引き上げるように通知。報酬も個人に直接支払うよう求めた。

 山陰中央新報社が山陰両県の市町村に聞き取ったところ、これまで国の基準を満たす市町村がなかった島根で、6市町が通知に応じた。鳥取は、既に年額報酬を満たす自治体が出動報酬を引き上げるなどして12市町村が基準を満たした。

 ■地域防災力の要

 引き上げを決断した自治体には、被災経験など切実な事情があった。

 例えば江津市は近年、市内を流れる江の川の氾濫といった水害に見舞われた。昨年8月の豪雨災害では延べ550人の団員が出動。人命救助や被害拡大の抑制に貢献しただけに、市の佐々木章夫危機管理監は「地域防災力の要。士気の維持に必要だ」と強調した。

 昨年7月の大雨で水害に遭った鳥取市や湯梨浜町も報酬を引き上げた。

 一方、対応に濃淡があるのは事実で、知夫村は既に処遇改善を見送ったほか多数の市町村が「(対応は)検討中」と回答する。出動が少ない地域性や国の交付金措置があるとはいえ、自治体の負担が増すことなどが二の足を踏む要因とみられる。

 ■分団単位が一般的

 報酬の支給方法も今後の課題だ。消防行政に詳しい、関西大社会安全学部の永田尚三教授によると、支給は消防団の「分団単位」が一般的。自治体が団員から委任状を取り分団に支給し、団員に配給する形があり、振り分けられず運営費に充てられ、団員が不満を抱える例もあるという。

 山陰両県では個人に直接支給する自治体は13市町村にとどまり、背景に出動状況や口座の把握など管理が煩雑で、自治体が十分に対応できない事情がある。

 改善を図る自治体もあり、松江市は21年度から消防団の出動状況などを申請・管理するアプリを運用。申請を紙と電子を併用しながら事務作業を軽減し、将来的に直接支給を目指す。

 永田教授は、処遇改善の動きについて「各自治体で改善意識が見られる」と評価。消防団が地域の防災組織として役割が増している実態に合わせ、変革する機会だと捉える。

 消防団員のサポート体制の検討は少子高齢化が進む地域をどのように維持するか、といった重要課題の議論に直結する。最適な方法を模索する歩みを止めてはならない。