江津市有福温泉町にある本明山(標高417メートル)が、登山愛好者の間で人気を呼んでいる。手頃な高さで気軽に登って山頂から絶景を楽しんだ後、温泉に入れるのが受け、市内外から連日、来訪者がある。地元住民は、地域資源に光が当たるのを喜んでいる。
麓から1時間弱で登れる山頂には、鎌倉時代に周辺を治めた福屋兼広が築いた城跡や、金比羅神社がある。北側は日本海や江津市街地を、南側は中国山地の山並みの大パノラマを望め、「頂上にいると天下を取ったような気分になれる」と評する住民もいる。
登山道にはスギやクヌギ、ヤマモモが生い茂り、島根の名水百選に指定された岩清水も湧き出る。
こうした魅力が、口コミやSNS(会員制交流サイト)を通じて広まった。
松江市の会社員、高橋悟さん(63)は「名水で調理した軽食を頂上で食べるのは最高」と語った。
登山口近くに住む山中彰さん(71)によると、連日、年配者やカップル、若い女性らが訪れる。「近くに有福温泉があり、登山後に疲れを癒やせるのも人気のようだ」と話した。
山頂ではかつて、住民が春に山菜を食べる会、春と夏に神楽奉納を催してきたものの、少子高齢化で廃れてきた。近年は豪雨災害で山道の一部が崩落する災厄もあったが、来訪者を迎えるため、有志が危険箇所の改修を進める。
浜田市方面から有福温泉町へのアクセス道路となる県道田所国府線が2021年度末に全線開通する予定もあり、地域再興への努力を続ける。(福新大雄)