史上最強とも言われる江戸後期の松江藩のお抱え力士・雷電(らいでん)為右衛門(ためえもん)(1767~1825年)を主人公にした幻灯機用の漫画作品が、鳥取市吉成の上嶋勝己さん(69)方で見つかった。全61こまのモノクロフィルムで、雷電の幼少期や力士となってからの活躍を紹介。戦後もしばらく家庭の娯楽だった幻灯機用フィルムが「伝説の力士」の往時の人気をしのばせる。
雷電は松江藩主・松平治郷(はるさと)(号・不昧(ふまい))に若くから取り立てられた長野県出身の力士。勝率9割6分2厘(254勝10敗)という無類の強さを誇った。大相撲の御嶽海が今年1月の初場所で、同じ長野出身として雷電以来、227年ぶりの大関昇進を決め、改めて注目された。
「フィルムがあったはずだ」と思い立った上嶋さんが見つけ出した漫画は、雷電の幼少期から始まり、米俵三つを軽々と抱えて大人を驚かせている様子、力士になり行司から勝ち名乗りを受けている場面などが描かれていた。
上嶋さんによると、幻灯機とともにフィルムも、大阪の母親の実家から贈られたもの。自宅の壁に投影し、父親が1こまずつせりふを読み上げてくれ、近所の子どもたちと共に観賞した記憶もあるという。
フィルムは破損の恐れがあるため、所蔵する他の作品と共にデジタル保存した。上嶋さんは「今となっては珍しいフィルム。希望があれば上映したい」と話している。
(福間崇広)