課題先進県―。山陰両県は長らくそういわれてきた。少子高齢化や若者の県外流出など山積する課題に対し、行政や民間が公表するデータの編目をかけると、また違った風景が広がる。「定住に本当に効果的な施策は?」「人口減少に歯止めをかけている自治体は他と何が違う?」。私たちが暮らす山陰両県や各市町村の過去から現在への変化を見つめ、強みや弱点を、データを使いあぶり出す。それが50~100年先の山陰の「未来」を描くことにつながるはずだ。まずは島根県の人口の推移を見ていこう。

【動くグラフで見る】島根県市町村別、旧市町村別の人口推移(1975年~2020年)

■減少率は「西高東低」
 島根県の人口減少は「中山間地域・離島問題」であることがデータをひもとくと改めて浮かび上がる。県人口は1955(昭和30)年の92万9千人をピークに67年間で27万人減少し、現在は65万9千人となった。松江、出雲両市が増加や横ばいを続け、東部の人口減が4万9千人にとどまる一方、圏域の多くが中山間地域となる西部は4倍の19万6千人減った。

 「平成の大合併」を経た現在の19市町村の区分を基にして算出すると、1955年時に人口が最大だったのは出雲市の17万5400人で、松江市が16万6900人と続く。隠岐諸島を除き、最も人口が少なかったのは川本町の1万2500人。隠岐4町村では知夫村の2100人だった。

 出雲部と石見部(大田市以西)、隠岐に分けて、当時と2022年現在の人口を比較すると、変化がより鮮明になる。

 出雲部は50万8900人から45万9800人、石見部は37万6400人から18万600人、隠岐は4万3800人から1万8700人にそれぞれ減少。県全体が92万9100人から65万9100人で3割減。地域別では出雲部9.6%減、石見部52.0%減、隠岐57.3%減となる。

 現在、松江市が1955年当時より20.3%増の20万800人となり唯一、人口増。出雲市は1.8%減となったものの、2000年代に本格化した外国人移住者の増加を背景に17万2300人を維持。近年は増加している。

 残り17市町村は全て大幅に減少した。中でも70%以上減ったのは5町村あり、最大は美郷町の77.7%減、次いで川本町が75.0%減、津和野町、知夫村がそれぞれ約71%減、飯南町が70%減となった。

 平成の大合併があった05年との比較では、津和野町の30.0%減を筆頭に、美郷町29.8%減、奥出雲町28.2%減、川本町27.8%減、飯南町25.8%減など。出雲市は0.8%減と横ばいで、松江市は4.7%減となった。

 19年に就任した丸山達也知事は、県政運営の最上位計画「島根創生計画」の柱に中山間地域・離島対策を挙げた。将来的に生活機能を維持、確保するため、日常生活に必要な機能を基幹集落に集約する「小さな拠点づくり」を最重要施策としており、その成否が今後の人口動向を左右する。

  (白築昂、佐々木一全、清山遼太)

■先進的対策打ち出す好機
島根大数理・データサイエンス教育研究センター 瀬戸和希助教

 島根大数理・データサイエンス教育研究センターの瀬戸和希助教(31)=福島県出身=は「過去の人たちの行動履歴の集積であるデータを正しく理解することは、未来を考えることにつながる」と強調する。

 2010年代に入り人工知能(AI)が急速に進化し「ビッグデータ」の集約・分析が一般化。動画配信サイトの多くは閲覧履歴に応じサイト側が利用者に「おすすめ動画」を提示し、米国通販大手・アマゾンは購入履歴を分析して個人の趣味趣向に沿った商品を提案する。

 瀬戸助教は「これまでよりずっと『より小さな需要』を見つけられるようになった」と指摘し、この手法を地域づくりにも応用できると説く。

 これまでは大きな単位でしかデータ収集できず、人口減や移住対策などが画一化してしまう面があった。今後「より少数単位のデータを分析していけば、土地ごとの特性に沿った具体的なアクションを考えることが可能だ」と力を込める。

 データの収集・分析が簡単にできるようになってきた一方「まだそれを十分に生かし切れている自治体や地域はほとんどない」と断言。中山間地域や離島など多様な地域を抱え、人口減や高齢化の課題先進県の島根において「他地域に先んじてデータと地域づくり、人口減少を絡め、先進的な対策を打ち出すチャンスだ」と呼びかける。  (白築昂)