乳幼児を集めて実験を行う実験室でカメラの調整をする佐藤鮎美講師=松江市西川津町、島根大松江キャンパス
乳幼児を集めて実験を行う実験室でカメラの調整をする佐藤鮎美講師=松江市西川津町、島根大松江キャンパス

 島根大人間科学部の佐藤鮎美講師(39)=家族心理学、発達心理学=が、研究対象として地元の乳幼児に継続的に協力してもらう「赤ちゃん研究員・子ども研究員」制度を立ち上げてから丸3年が経過した。島根の子どもの特徴や個性が徐々に明らかになっているほか、研究者と親子との交流も生まれている。 (増田枝里子)

 もともと同学部の村瀬俊樹教授(62)=発達心理学=が赤ちゃんに参加してもらう研究を始めたのが1996年。その後2009年に「赤ちゃん研究員」と名付けて継続し、17年秋に着任した佐藤講師が、本格的に制度化した。

 主に松江市の乳幼児健診の会場で、学生がチラシを配布して研究員に参加してもらうよう呼び掛けている。現在0歳児から小学校低学年までの約200人が登録。大学内での実験に参加するほか、新型コロナウイルスの流行が拡大してからは、オンラインや質問用紙を郵送しての実験に協力している。

 研究成果の一つが、色の好み。島根の子どもは広島に比べ、彩度の低い「淡い色」を好む傾向があることが分かった。塗り絵や、多様な色の中から好きな色を選んでもらう実験の結果だった。島根県内は景観に低彩度の色が多く用いられているほか、湿度が高く、景色が実際の色よりも白みがかって見える傾向があることなど、気候特性が色の好みに影響すると考えられた。実験を担当した竹下明里さん(22)は「返送された回答用紙に励ましの言葉が添えられていたことが何度もあり、励みになった」と参加者に感謝した。

 ほかにも、子どもが没頭しやすいデジタルデバイス(スマートフォンやタブレットなど)の使用を、自らやめることができるよう促すアプリの開発など、興味深い研究が今も続く。

 佐藤講師や学生たちは親子に対して、研究への参加が気分転換になればいいとも願う。中には転勤族など島根となじみの薄い親子が、実験者に悩み相談を持ち掛ける機会にもなった。実験した志食和馬さん(22)も「家庭の生の声を聞けるいい機会だった」と振り返る。

 現在はコロナ禍で、学内に親子を集めての実験は難しくなっているが、落ち着いたら再開するという。佐藤講師は「子どもの発達に関心を抱いてくれる保護者が多く、強力なパートナーだと感じている。大学に親子で遊びに来る、という気持ちで参加してほしい」と研究員への登録を呼び掛けている。

 研究に参加した人へは謝礼がある。問い合わせは佐藤講師、メールayumisato@hmn.shimane-u.ac.jp