松江市朝酌町の矢田地区で古くから伝わる妖怪カッパの物語「矢田のかわこ」を広めようと、朝酌公民館の青少年部が紙芝居を製作し、子どもたちに水難事故の怖さなどを伝えている。「カッパに襲われないよう、キュウリを作らなかった」という、地域で実際にあったエピソードを盛り込んでおり、郷土教育にも生かす。 (古瀬弘治)
物語でかわこ(カッパ)は川で泳ぐ矢田の子どもを溺れさせる厄介者として登場。ある日、住民に捕まえられたかわこが「(好物の)キュウリを矢田で作らなかったら悪さしない」と約束したため、同地区ではしばらくキュウリを栽培しなかった。
ところが昭和に入り、子どもが川で亡くなったことで住民は「約束が破られた」と理解。最寄りの多賀神社でカッパが二度と現れないよう祈願し、キュウリを作り始めたという。
伝承できる人が減ったため、原作を知った公民館職員が2021年春に住民を誘って紙芝居の製作を始め、同年12月に完成した。
製作に関わった松浦秀幸さん(74)は叔母や両親から断片的に言い伝えを耳にしていたといい「神社に祈願した後もかわこが怖かったのか、キュウリを作れない時期があったと聞いた」と話す。
紙芝居はB4判程度の大きさで15ページ。子どもでも分かりやすい言葉遣いやストーリー展開を意識した。現在、住民らが地区内の小学校などで読み聞かせをしている。
矢田地区は五つの川が合流する地域で、松浦さんは「(昔は)水難事故が多かったのではないか」と言い伝えの由来を推察。「今の子どもたちは事故に遭ってほしくない」と、紙芝居が長く読まれることを願った。













