自伝小説を手にする石田光輝さん(中央)と「GOZ’S」のメンバー=米子市両三柳、SHOWA〓(?)
自伝小説を手にする石田光輝さん(中央)と「GOZ’S」のメンバー=米子市両三柳、SHOWA〓(?)

 境港市出身の歌手で作曲家の石田光輝さん(71)=米子市両三柳=が自伝小説「あの頃のままに~遠回りしたエレキ小僧~」を執筆した。歌手に憧れた幼少期から、地元を拠点に作曲家として成功する過程を描写。仲間の裏切りやがん闘病も赤裸々につづり、数々の困難を乗り越え今も現役のバンドマンとしてステージに立つ波瀾(はらん)万丈の人生を軽快な筆致で記した。 (園慎太郎) 新型コロナウイルス禍で時間に余裕ができ「子どもの頃からの思い出を書いておこう」と一念発起した。今井印刷(米子市富益町)が運営する店舗「小さな今井」の「第1回小さな今井大賞」で特別賞を受賞し、出版が決まった。

 作品を貫くのは音楽への思いと奔放な生きざまだ。

 小学5年で橋幸夫に憧れ歌手を夢見て、境高校では自身のバンドが音楽コンテストで評価され「ギター一本でスターになれる」と自信を深めた。一度は家庭の事情で楽器セールスマンや写真家の故植田正治さんの運転手をしたが、夢を諦めきれず、バンドマンとなり破天荒な生活を送った。

 転機は、父の死や結婚を経た30歳の時だ。バンドをやめて店を開こうと考えていたところ「お前が芸人だから好きだった」と知人に叱咤(しった)され、作曲家に転身すると才能が開花した。数々のコンテストで高い評価を受け、石川さゆりさんや鳥羽一郎さんら演歌の大御所に楽曲を提供し、各地でカラオケ教室も開いた。

 決して順風満帆ではなかった。仕事の歯車が狂い、信頼したスタッフに金を持ち出されて自己破産。がんで手術を重ね、膀胱(ぼうこう)を全摘出した。50歳を過ぎ同級生らと再結成したバンド「GOZ’S(ゴズ)」や家族、ファンに支えられ2016年に闘病から舞台に復活した。著書では、若き日の思い上がりを自戒しつつ、古里への思い、周囲への感謝を記した。

 今も毎月、舞台に立つ。4日に米子市であったバースデーライブでは「都合の悪いこと以外、全て本に書いてある。こんなバカがいたと知ってもらえればうれしい。声が出る限り目標を定めずやっていきたい」と優しく語りかけた。

 「あの頃のままに~」は四六判200ページ、1430円。山陰両県の今井書店や今井印刷の通信販売サイトで購入できる。