7日に松江市袖師町の島根県立美術館を会場に開幕した第69回日本伝統工芸展で、自作の花入れを特別な思いで見守る男性がいる。出雲市のガラス工芸作家の川辺雅規さん(51)。りりしいたたずまいに仕上げ、新人賞を受賞した逸品だ。4回目の挑戦で初めて入賞し「よりいいものをと突き詰め、結果を出せてほっとした」と喜ぶ。 (藤原康平)
栃木県出身で作家として25年のキャリアがある。今回出品した硝子(ガラス)鶴首(つるくび)花入(はないれ)「凛然(りんぜん)」は高さ約60センチ、幅約2~15センチ。最も内側に一層の灰色のガラスを施し、その上に5層の白いガラスが重なる。表面を研磨することできれいなグラデーションが現れるよう、色ガラスの分量と全体のバランスに細心の注意を払った力作だ。
「ガラスの専門知識がない人でも思わず見入ってしまうような完成度を意識した」と川辺さん。出雲市斐川町出西のガラス工房Izumoを拠点に、普段から頭の中で創作をイメージしてきた。
構想が定まったのは今年の春ごろ。出雲市出身の妻香織さん(45)と2人で営む工房にも気を配らねばならず、工芸展用の制作に集中できる時間が限られる中、持てる技術を注入し、味わいを出す独自の表現を追求した。川辺さんは「今後もいい作品を作り続けたい」と意気込んでいる。