フリートウッド・マックの元メンバー、クリスティン・マクビーが11月末に亡くなった。79歳だった。バンドの黄金期を支えたメロディーメーカーで、ソロとしても活動した彼女の楽曲はポップ・ミュージックの王道を行くような親しみやすいものだった。心に深く刻まれた歌の数々がよみがえってくる。
英国出身。1970年にフリートウッド・マックに参加し、ボーカルとキーボードを担当した。67年、英国結成のこのバンドはもともとブルースをやっていたが、メンバー交代を重ねる中でソフトロックへと変化。74年にはリンジー・バッキンガムとスティービー・ニックスの米国人2人が加入し、クリスティンを合わせたシンガー・ソングライター3人が曲作りとボーカルを担うようになって飛躍を遂げる。

米ビルボードのアルバムチャートで1位を31週もキープした77年の「噂(Rumours)」や、再びナンバーワンとなった82年の「ミラージュ(Mirage)」、87年の「タンゴ・イン・ザ・ナイト(Tango In The Night)」(7位)などヒットアルバムを連発。3人の自作曲をバランスよく収めたこの時代のアルバムは、それぞれの個性が光る歌がちりばめられた玉手箱のような作品集だった。ソロでも十分に活動できる3人が、えりすぐりの歌を持ち寄って共演しながら作り上げるアルバムだから、売れないはずはないだろう。誰の曲をシングルにするかで、もめないだろうかなどとも思ったりしたものだ。
その3人の個性はというと、ロックの歌姫などと称されたスティービー・ニックスは妖艶な雰囲気を漂わせ、リンジー・バッキンガムは職人的なポップセンスを感じさせた。クリスティン・マクビーは2人ほど目立たないものの、ハスキーボイスで軽快なロックからメロディアスなポップソング、大人の味わいのあるバラードまでオールラウンドに歌う。奇をてらうことなく、曲の良さで勝負している印象だった。楽曲(共作含む)には「ドント・ストップ」(3位、77年)や「ホールド・ミー」(4位、82年)、「リトル・ライズ」(4位、87年)など全米ヒット曲も多い。個人的には、クリスティンの穏やかなポップソング「ラブ・イン・ストアー(Love In Store)」で始まり、いかにも彼女らしい味わい深いバラード「面影を抱きしめて(Wish You Were Here)」で終わるアルバム「ミラージュ」が大好きだ。

バンド活動と並行して84年に発表したソロアルバム「恋のハート・ビート(Christine McVie)」(26位)も好アルバム。オーソドックスな大人のロックを繰り広げ、シングルヒット「恋のハート・ビート(Got A Hold On Me)」(10位)と「愛のてだて(Love Will Show Us How)」(30位)を生んだ。”盟友”リンジーが複数の曲に参加。ほかにエリック・クラプトンが1曲でギターを演奏し、スティーブ・ウィンウッドが1曲でデュエットするとともに4曲でキーボードを弾いているのも聴きどころだ。(洋)
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