縁起物とされる正月用のブリが並ぶ山陰両県の店頭で、買い物客は財布のひもを緩めるかどうかで悩んでいる。物価高騰で生活防衛意識を高める中、水揚げ減や生産コストの上昇を反映し天然、養殖ともに例年と比べて高値傾向。1匹買うか半身にするか、品定めに時間がかかる。 (森みずき)
境港水産物直売センター(境港市昭和町)や山陰浜田港公設市場(愛称・はまだお魚市場、浜田市原井町)には、松葉ガニや赤貝(サルボウガイ)などに交じってブリが並ぶ。毎年、ブリを買うという雲南市の会社員福浜駿さん(29)は、公設市場で養殖物の値札を見て「昨年と比べて1キロ当たり500円は高い」と話した。
浜田市では、養殖物の1キロ当たり単価が昨年比で400~600円上昇した。原井町のやなぎ水産は350匹を仕入れ、1匹4~5キロサイズを1万円で販売。昨年よりも2千円近く値上げした。主産地の鹿児島や大分、愛媛各県で「モジャコ」と呼ばれる稚魚の記録的不漁が影響したとみられ、柳雄一郎社長は「全国で元値(仕入れ値)が上がっている」と説明した。
天然物で人気が高い1匹10キロ前後は、1キロ当たり5千円だった昨年ほどではないものの、市場関係者が「消費者にとって2千円以上は高値」とみる中で、しけなどが響いて品薄感が広がり、今年の相場は2千~3500円となった。
公設市場で贈答用と自宅用を買い求めた広島県三次市の自営業重広敏行さん(73)は「天然物が欲しいが高いね。うちの分は半身か、カンパチにするか」と迷い、広島県安芸高田町の40代会社員男性は「1匹を買う年があるが、今年は値段を見て、半分にする」と半身を購入した。