「京都慕情」「雨の御堂筋」の詞も
「お魚くわえたドラ猫(ねこ)…」。こんなユニークな歌詞(かし)で始まる曲に聞き覚えはありますか。半世紀(せいき)以上続く国民的アニメ「サザエさん」の主題歌です。大田(おおだ)市出身の林(はやし)春生(はるお)(本名・良三(りょうぞう)、1937~95年)が作詞しました。
春生は幼少期(ようしょうき)から大田市大屋(おおや)町で暮(く)らし、大屋小学校、久利(くり)中学校に通い、邇摩(にま)高校から松江(まつえ)高校に転校しました。法政(ほうせい)大を卒業後は、テレビディレクターとして活躍(かつやく)しました。
在職(ざいしょく)中から作詞の才能(さいのう)を発揮(はっき)し、サザエさんの主題歌だけでなく「京都慕情(ぼじょう)」「雨の御堂筋(みどうすじ)」、アニメ「海のトリトン」の主題歌などヒット曲を世に送り出しました。
中でも、春生が特別な思いを持っていたのが、現在(げんざい)は久屋(くや)小となった母校・大屋小の校歌です。
自身の在学中は校歌がなく寂(さび)しい思いをしたといい、「母校のため、後輩(こうはい)のために、どこにも負けないような立派(りっぱ)な校歌を作りたいと思った。後々まで歌い続けられていくことは過去(かこ)何百曲も書いた作詞の中で一番意義(いぎ)深いもの」などと、郷土愛(きょうどあい)あふれる文章を残しています。
作曲は、2021年東京五輪開会式でも使われた人気ゲーム「ドラゴンクエスト」の音楽を手がけ、義理(ぎり)の兄でもある作曲家・すぎやまこういちさんに依頼(いらい)し、1976(昭和51)年に制作(せいさく)しました。すぎやまさんは最高齢(さいこうれい)でゲーム音楽を作曲したとしてギネス世界記録に認定(にんてい)された人物でもあります。
昨年夏には、大屋まちづくり推進(すいしん)委員会が春生の功績(こうせき)を市内外に発信し、人口約300人で高齢化率(りつ)60%を超(こ)える大屋町の活性化(かっせいか)のよりどころにしようと、町内に看板(かんばん)を設置(せっち)しました。縦(たて)90センチ、横180センチで、フグ田サザエのイラストと春生の活躍が刻(きざ)まれています。
住居跡(じゅうきょあと)には、寝(ね)る間を惜(お)しんで仕事に没頭(ぼっとう)した亡(な)き夫の生涯(しょうがい)を記した妻(つま)日南子(ひなこ)さんの文章を載(の)せた90センチ四方の看板もあります。
有名なアニメの作詞者が大田市出身の偉人(いじん)と分かれば、日曜夜に流れる曲の聞こえ方が変わるかもしれませんね。
















