島根県吉賀町が3月定例町議会に提出した総額76億900万円の2023年度一般会計当初予算案が、16日の本会議で賛成少数で否決された。公設民営化を目指す六日市病院の財政支援などの重要課題を巡る町の姿勢や説明不足に対し、膨らんだ議会側の不満が露呈。可決を求め、岩本一巳町長が議場で土下座する場面もあった。町は3月中の予算成立を目指し、修正案を臨時議会に提出する。 (藤本ちあき)

【写真】吉賀町の岩本一巳町長

 当初予算案に町は六日市病院の財政支援に絡み町財政への影響が見込まれるとして、町内の事業者・団体の補助金10%カットを計上。当初の解体方針から、住民の要望を受けて一転させた旧六日市医療技術専門学校の施設活用に向け、官民連携の事業推進役として集落支援員を配置する経費も盛り込んだ。

 補助金カットについて、この日の採決を前に桜下善博議員が反対討論で「厳しい財政運営のツケを町民に押しつける。執行部が財政改革を行うべき」と指摘。

 議会側にはこのほか、専門学校の施設活用を巡り、昨年9月議会の決議で「老朽化した建物を引き受けても負の遺産になる恐れがある」として慎重な対応を求めたが、町の姿勢が変わらず、説明が足りないことへの不満もあったという。

 岩本町長は一般質問などでも厳しい意見が相次いだことを踏まえ、質疑、討論に先立ち議長に発言を求めた上で「最後の、最後のお願い」などと述べ、土下座したものの、賛成5、反対6で否決された。

 町の一般会計当初予算案が否決されるのは、第三セクターの民営化に伴う債務負担などを巡り反対意見があった、岩本町長1期目の21年度に続き2度目。取材に対し、同町長は「不徳の致すところ。行政運営に支障を来さないように原案を精査し、理解をいただけるように大至急対処する」と話した。

 3月議会は六日市病院の財政支援に絡む町三役の給与減額案、追加3議案を含む他の28議案については原案通り可決、閉会した。