岩井奉信日本大名誉教授
岩井奉信日本大名誉教授

岸田政権と解散・総選挙のゆくえ
予算成立後の来春選挙か

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が27、28日、米子、松江各市であった。日本大名誉教授の岩井奉信(ともあき)氏(72)=政治学=が「岸田政権と解散・総選挙のゆくえ」と題して講演。衆院解散・総選挙は来年との見方を示し、目線が内向きな政権に国民が厳しい視線で見つめていく重要性を説いた。要旨を紹介する。

 岸田内閣は発足後、支持率は30%前後と高くなく、G7広島サミット後に上昇した時期もあったが、もともと「低位安定内閣」だ。

 以前は内閣支持率は下がっても自民党の支持率は高かったが、最近は両方が下がっているのがポイントで、理由は3点ある。マイナンバーカードの問題で国民の不安が増している点、LGBTなど性的少数者への理解増進法施行が保守支持層に受け入れられなかった点、年3兆円台半ばの追加予算を投入する少子化対策が女性に不評な点だ。

 岸田文雄首相には危機感があまり見られない。首相を脅かす存在がいないからだ。「ポスト岸田」をうかがう河野太郎デジタル相はマイナンバーカードを巡る一連の問題で批判を浴び、茂木敏充党幹事長も公明党との関係を見誤った。さらに自民党最大派閥・安倍派がまとまらず首相には都合の良い状況となっている。

 とはいえ来年秋の総裁選までに解散・総選挙をして政権基盤を強化しておく必要がある。そこで今秋までに予想される内閣改造・党役員人事で支持率を上げ選挙に打って出るとの見方がある。ただ人事に大きな目玉がない。幹事長の茂木氏は動かしにくく、安倍派の有力者「5人組」も要職に就いており、こちらも動かしにくい。反発を懸念し内向きな改造になるだろう。

 選挙はいつか。取り沙汰される今秋は東京電力福島第1原発処理水の海洋放出や、インボイス制度が始まるため好機とは言えない。2024年度予算が成立する来春が予想される。

 首相は政策に具体性がなく人事を含め自身の足元ばかりを見ている。党内も内部で争いがあり国民が置き去りにされ、政治に活力がなくなっている。現状を変えるため有権者は政治家に提言するべきで、声を上げていかなければならない。

      (柴田広大)