幕末の益田で長州軍と幕府軍が激突した「石州口の戦い(1866年)」から今年は155年になる。節目を機に、戦いの軌跡を描いた『近代日本夜明けの道を歩く』(2012年)の作者2人が、ゆかりの寺院や学校などに本を贈り、歴史学習に役立ててほしいと活動している。
原稿用紙600枚分の文章と写真450枚を掲載した本は、郷土史家の矢冨巌夫(いずお)さん(92)=益田市東町=が文章、島根写真作家協会理事の吉﨑佳慶(よしのり)さん(80)=同市久城町=が写真を担当。山陰両県をはじめ、岡山県津山市にも足を運び、3年がかりで取材、執筆した。
石州口の戦いは、明治維新につながった第2次長州征伐で、浜田藩と津和野藩の藩境・扇原関門(現在の益田市多田町付近)で浜田藩士の岸静江が大村益次郎率いる長州軍と戦い、憤死した。
吉﨑さんは今春「益田が近代日本の夜明けの舞台となったことを伝えたい」と思い立ち、矢冨さんに相談。自分たちのストック分15冊を、市内4高校や市立図書館、ゆかりの地が校区内にある吉田南、益田の両小学校など12カ所に贈った。
このうち、長州軍が打ち込んだ銃弾跡が残る万福寺(同市東町)では、吉﨑さんらが3日、神一(こうかず)紀道(としみち)住職(78)に手渡した。神一住職は「発刊時に続いての寄贈で、本当にありがたい」と感謝。吉﨑さんは「観光客や地元の子どもたちに読んでもらえる場所を選んだ。広く益田の歴史を知ってほしい」と話した。
(中山竜一)