JR西日本が木次線を走るトロッコ列車「奥出雲おろち号」の運行終了を発表した3日の記者会見では、木次線そのものの存廃判断との関連性を巡る質問が相次いだ。
同社は2月、具体的な路線名は示さなかったものの、低収益のローカル線は廃止を含め地元と議論を進めると表明。
おろち号は木次線利用の呼び水となる観光列車で、廃止となれば路線に影響が及ぶのは確実だが、牧原弘執行役員米子支社長は存廃判断とは「関係ない」など繰り返した。
あくまで、製造後40年以上がたった車両の老朽化が激しく、安全な運行を続けるのが困難なためと強調。修理部品の調達にも苦慮し、6年に1度の車検を迎える2023年末での運行終了を決めたとした。
最大の赤字幅
半面、新造などで観光列車は残すことができる中、同社が費用の試算を含めて検討しなかった背景には、ローカル線に資源を投入する余力がないことがある。
人口減で経営環境が厳しくなる中、21年3月期連結決算は新型コロナウイルスの影響が加わり、2332億円の最終赤字を計上。1987年の民営化以降、最大の赤字幅となった。
経営改善に向け、社員を断続的に休業させる「一時帰休」を1日当たり千人以上の規模で実施。
6月からは社員200~300人をグループ外に出向させることでコストカットを進めており、いずれも本社だけでなく、米子支社も対象となっている。
特急の運行本数を減らしたほか、在来線の減便も検討中。新幹線を含む管内51路線で、2019年度の旅客運輸収入が3番目に少なかった木次線が存続する保証はない。
手詰まり感
沿線自治体でつくる「木次線利活用推進協議会」は危機感を強め、21年度は例年の約10倍となる2800万円の利用促進事業費を計上。木次線利用を伴うグループ旅行者への助成制度を創設したほか、沿線住民が通勤で自家用車から路線利用へ転換を図る事業に乗り出した。
しかし、助成制度が7月末までの適用目標2800人に対し4日現在で363人にとどまるなど、新規施策には手詰まり感が漂う。
客数減に苦しむ他のローカル線は列車内で演劇を披露したり、地元食材を使った本格イタリアンを提供したりして打開に動いている。
木次線ではかつて、車内でスイーツや地酒が楽しめるツアーを企画。若い女性を中心に集客した実績がある。
おろち号には新型コロナ禍前の19年度に約1万3千人が乗車。木次線全体の乗客数の1割弱で、決して少ない数字ではない。
JR西が運行終了の姿勢を崩す気配がない中、沿線関係者は再考を求め続けるだけでなく、食や神楽など地域ならではの素材を組み合わせた活用策を考える必要がある。
(雲南支局・狩野樹理、清山遼太、米子総局報道部・田淵浩平が担当しました)