第三章 宝船(三十二)

「富山も火事が多いの」

 寅蔵の問いに久太郎は頷いた。

「暖かく乾いた山風ゆえ、小火(ぼや)がみるみる飛び火して、大火事になりやがる。産物も少ない。...