手術前日、病室のベッドの上。がんを告知されたショックから立ち直れずにいた大津一貴(33)の脳裏に、降ってくるように考えがわいた。「死ぬかもしれないなら、サッカーがしたい」。このとき22歳。既に就職して働いていた。少年時代に抱いたプロ選手の夢は、諦めたはずだった。

▽遠い位置実感

 中学時代、所属していた札幌のサッカークラブで頭角を現した。全国から優秀な選手を集める合宿に呼ばれ、後に有名になる香川真司や吉田麻也と汗を流した。海外で活躍するプロを目指し、強豪の...