第四章 大冴え(九)  寅蔵はにかりと笑った。 「木(き)戸(ど)銭(せん)、奢(おご)ってな」 「奢る奢る。そうそう、道具商いなら」  松五郎は細い唇を合わせ直し、声を潜める。 ...