島根大(本部・松江市西川津町)の前身となった旧制松江高校で愛された寮歌「青春の歌」が19日、披露される。2010年まで同校同窓会主催の「松江寮歌祭」が開かれ全国の旧制高校卒業生らが松江市に集まり熱唱していたが、高齢化で幕を閉じ同窓会は解散。近年はほとんど歌われなくなっていた。開校から100年の節目に、島根大混声合唱団が大先輩たちの思いを胸に、声を重ねる。 (森みずき)
旧制高校は明治以降、各地にでき1950年に国立大の母体となって姿を消した。多くが全寮制で寮歌は校歌とともに親しまれた。
旧制松江高校は21(大正10)年に開校。同じ年に「青春の歌」が生まれた。「松高歌集」(1932年)には寮歌と名の付く歌だけで5曲あるが、最も愛されたのが「青春の歌」だった。
かつては300人の学生が町中で円陣を組み、大声で寮歌を歌って騒ぐ「ストーム」を行い、市民を驚かせた。50年に閉校する際は学生や教職員が涙ながらに寮歌を歌い、幕引きに花を添えたという。
2010年の第14回松江寮歌祭では全国の旧制高校・大学予科29校の約250人が参集。旧制松江高校の約50人も学帽や羽織、高げたの「バンカラ学生」姿で声を張り上げていた。
同窓会の事務局長だった島根大名誉教授、西上一義さん(94)=松江市奥谷町=は「理想を追求した時代に、人の世の理想を歌っていた。今の時代にはない、宝物のような歌だった」と懐かしむ。
「青春の歌」は10番まであり、若者を鼓舞する言葉や地域の賛辞が入るのは今の一般的な校歌と同様。3番は「夕月登るみづうみの 舟に遊子の思ひあり」と夕日が染めた宍道湖で船に乗る旅人の情景を描く。
違うのはスケールの大きさ。7番で「千里こほれる(凍れる)シベリア」、8番で「ガンジス河に咲く花」などと海外にまで飛躍する。
現在は島根大でも一部の卒業生で歌い継がれるが、知る人はごくわずか。混声合唱団団長で人間科学部3年の今村愛さん(20)も今回の企画で寮歌を知った。メンバー25人で練習を重ねており「曲調に誇りを感じる。私たちが歌うことで当時の雰囲気が伝わればうれしい」と意気込む。
「青春の歌」合唱は、松江市殿町の松江歴史館で27日まで開催中の企画展の関連イベントで、19日午後1時半から。先着50人(雨天時は30人)で、申し込みは不要。
◆「青春の歌」歌詞
一
目もはろばろと桃色の
春のくも行く大空を
仰ぎて立てる若人に
三春清き花のかげ
二
ああこの若く円(まど)かなる
丘にむすべる夢と夢
永遠(とわ)の命にとけてゆく
行方は知らず霞(かす)むかな
三
ふるさと遠く日は落ちて
四方(よも)の山脈(やまなみ)むらさきに
夕月登るみづうみの
舟に遊子の思ひあり
(4番以下略)