JR松江駅北口(右)に隣接する一畑百貨店(左)。閉店後のまちづくりが課題になる=10月、松江市朝日町
JR松江駅北口(右)に隣接する一畑百貨店(左)。閉店後のまちづくりが課題になる=10月、松江市朝日町

 「県都の玄関口」をこのまま寂れさせてしまっていいのか。

 松江市朝日町のJR松江駅に隣接する一畑百貨店が来年1月14日の営業を最後に閉店し、65年余りの歴史に幕を下ろす。1998年に島根県庁近くの同市殿町から現在の建物に移転して以降、駅前周辺のにぎわい創出に一役買ってきたが、大型ショッピングセンターの進出やインターネット通販の急成長によって売り上げが減少し、やむなく閉店の道を選んだ。

 とはいえ、このまま県都の玄関口を「空洞化」させてしまっては、国際文化観光都市としてのイメージダウンにつながり、町の活気もうせてしまいかねない。駅前整備の方針を早急に策定する必要があるだろう。

 一畑百貨店の閉店により、島根県は百貨店ゼロの「空白県」になる。山形、徳島両県に続いて全国3県目だ。

 先行県の現状はどうなのか。

 山形県では2020年1月、江戸時代から歴史を重ねた大沼百貨店が経営難から破綻した。人口約24万人の山形市。中心市街地の一等地・七日町には今も7階建ての建屋が残るものの、外壁はくすみ、廃虚感が漂う。

 築年数が古い上に耐震性がなく、短期的な利活用も難しいことから、市は今年2月、市議会全員協議会で解体方針を表明。隣接する市立病院済生館の建て替えと一体化した再開発を進める計画で、周辺の民間所有の土地や建物を加え、24年以降に再開発の対象範囲や事業手法を決める見通しという。

 一方、徳島県では20年8月、徳島市のJR徳島駅前にあったそごう徳島店が37年の歴史に幕を閉じたが、跡地のビルに入る格好で、三越徳島が22年4月に開業した。高松三越(高松市)のサテライトショップとして運営しているため、日本百貨店協会には加盟しておらず、徳島県は今も百貨店「空白県」の扱いが続いている。

 両県の動向と比べると、一畑百貨店は「徳島型」を模索しているようだ。親会社の一畑電気鉄道(松江市中原町)は店舗建物を残し、県内外の小売店をテナントとして誘致して商業施設として存続させる方針。6階の建物のうち、買い物客の出入りが多い地下1階から地上2、3階までを商業利用するテナント業者に貸し出す想定で、賃貸料などを含めて交渉している。同時に高層階についても利活用策を検討しているという。

 建物は築40年以上で、解体費用が多額に上るのに加え、更地にした場合の駅前の景観悪化を避けたい思惑もあるようだ。

 一方で、閉店後のまちづくりを含めた議論はこれからだ。松江市は13日、駅前整備に向けた検討組織「松江駅前デザイン会議」を立ち上げ、26日に初会合を開くと明らかにした。市幹部に加え、市内の金融機関やまちづくり会社の関係者、大学教授ら11人で構成。来年秋をめどに将来的な駅前の在り方を策定するという。

 上定昭仁市長は「中長期的な視点としてはダイナミックな変革が必要だ。新たな松江駅前の在り方を皆さんと一緒に考えていく」と意欲を示した。

 まさしくその通りで、手がけるからには中途半端な内容では将来はない。百貨店閉店はピンチに思えるが、にぎわい拠点へ再生するチャンスでもある。