山陰両県で新型コロナウイルスワクチンの接種が進み、感染拡大が一段落した中、高齢者福祉施設が直接の面会を再開し始めた。時間や人数の制限付き。親族らとの面会は入所者にとって潤いや刺激となり、特に認知症患者には不可欠。集団免疫獲得にはまだ遠く、慎重な対応が続きそうだ。 (取材班)

 

 鳥取県日南町生山の中島義人さん(69)は施設に入っている叔母(95)と1年以上、直接顔を合わせていない。コロナ禍で面会が制限されているからだ。叔母は入所時から認知症で「次に会えた時には自分のことが分からないかもしれない」と気をもむ。

 各施設は、利用者や親族の心情と感染リスクの両にらみ。これまで画面越しの面会を認めるなど工夫してきたが、今月半ばごろから制限を緩和する動きが出てきた。今春から高齢者対象のワクチン接種が進み、第1回の接種を終えた高齢者は20日現在、島根49・6%、鳥取55・7%となり、感染拡大第4波もヤマを越したとみられるためだ。

 特別養護老人ホームの雪舟園(益田市かもしま北町)は、これまでテレビ電話での面会に限っていたのを、22日から感染防止のシート越しに親族が面会できるようにした。野村正樹園長は「(利用者は)表だって口にされないが面会を望まれているのは分かる。ほっとしている」という。

 介護老人保健施設の寿生苑(出雲市上塩冶町)では既に利用者全員が接種を完了。予約制で一度に2人まで、10分間までとして面会を再開した。山崎裕事務長は「利用者の認知面、精神面の悪影響を考慮すれば面会は欠かせない」と話す。

 悩ましいのは、高齢者への接種が進んでも、必ずしも安心できない点。条件をさらに緩和したい気持ちはあるが、新たな利用者が加わるのに加え、変異株へのワクチンの有効性が未知数。山崎事務長は「全面解禁は難しい」と慎重だ。

 さらに、ワクチンを巡っては、接種できない人や望まない人もいるだけに、条件付きでも面会の再開をためらう施設もある。

 島根県内の医療、介護施設でつくる県民主医療機関連合会(真木高之会長)によると、加盟する松江市内2施設の関係者のうち1割が接種を希望していない。8割以上が接種という集団免疫の獲得には、まだ時間を要するとみており、真木会長は「当面は基本的な感染対策を続けることが重要」と警戒を緩めていない。