肥満と健康リスクの関係
肥満と健康リスクの関係
医学的根拠に基づく健康情報の重要性を訴える国立健康・栄養研究所の津金昌一郎所長
医学的根拠に基づく健康情報の重要性を訴える国立健康・栄養研究所の津金昌一郎所長
肥満と健康リスクの関係
医学的根拠に基づく健康情報の重要性を訴える国立健康・栄養研究所の津金昌一郎所長

 世の中には多くの健康情報があふれている。新型コロナウイルス感染を防ぐとして話題になった食べ物やサプリメントもあるが本当に効き目があるのだろうか。しっかりした医学的根拠(エビデンス)に基づく健康情報の発信に長年取り組んできた国立健康・栄養研究所の津金昌一郎所長は「確かな裏付けがない情報がメディアで広がる例もある。安易に踊らされず冷静に信頼性を判断してほしい」と訴える。

 「現時点で新型コロナウイルス感染症に対する予防効果が確認された食品・素材の情報は見当たりません」。同研究所はホームページの「『健康食品』の安全性・有効性情報」で、風邪やインフルエンザ、新型コロナの予防に効果があるとの情報やうわさが広がった食品について根拠を調べた結果を公開している。

 米国立医学図書館のデータベースでこれまでに40以上の対象を検討したが、少なくともコロナに対する効き目がはっきり確認されたものは見つからなかった。朝鮮ニンジンや緑茶などインフル症状に効くと宣伝されるものもあるが、コロナ予防の効果はみられない。ビタミンCやビタミンDのサプリメントはインフル症状の予防の効果があるとする報告と、効果がないとする報告が混在して結論は出ていない。健康食品として人気のマヌカハニーや納豆、みそにはインフルを含む感染症の予防効果は確認されなかった。

 「おいしくて本人の気分が良くなるならそれでもいい」と津金さん。「ただ健康にいいと聞くと、まずくても高くてもそればかり摂取する人が出てくる。食生活のバランスを崩す可能性がある」と話す。

 津金さんは国立がん研究センターで多くの日本人を対象に、どんな生活をするとがんや心臓病、糖尿病などの病気になりやすいかを長期間にわたって追跡する疫学研究の責任者を務めてきた。今年2月には最新の研究結果を他の研究機関と「健康寿命延伸のための提言」としてまとめた。

 私たち日本人が注意したいのが「肥満」に対する考え方だ。太りすぎはがん死亡などの健康リスクを高めるが、逆に痩せすぎもリスクになる。肥満ばかりを気にしていてはかえって健康を害することもある。

 背景にあるのが日本人と欧米人の体格の違い。肥満度は体重を身長の2乗で割った「体格指数(BMI)」で示すが、米国ではこの数値が30以上の肥満が人口の3割以上を占める。日本では数%と少ない。

 欧米人を対象にした研究と日本人の研究を合わせると、BMIと健康リスクの関係は「U字カーブ」を描く。欧米人はBMIが高めの位置に分布し、日本人は低めに分布している。

 「日本では欧米並みの肥満は少数派。大多数の人には『適正体重を心掛けよう』というのが正しいメッセージだ」と津金さん。「全国民に向けて一律に肥満防止のメッセージを送り続ける日本のメタボ対策は間違っている可能性がある」と指摘する。

 コロナ感染では喫煙や肥満、糖尿病などが重症化リスクになることが注目された。さまざまな病気のリスクを高めるたばこをやめ、塩分が少なくバランスの良い食事を心掛け、適度な運動を日常的に続けるのが有効だ。

 「こんな当たり前の生活習慣が、慢性疾患だけでなく感染症にも強い健康な体をつくる。パンデミックは従来の医療体制を大きく見直す契機になりそうだが、長期的に見れば健康な体づくりの重要性はこれまでと変わらない」と津金さんは語る。