自治体が住民向けの旅行割引を続々と再開させている。各地域の新型コロナウイルス感染者数が減ってきたからだ。政府の観光支援事業「Go To トラベル」は全国停止から28日で半年。事業復活が見通せない中、自治体は独自割引で近場旅行の需要回復を狙う。関連業界では「安心な旅」にしてもらおうと、ワクチンの職場接種が進んでいる。
分散利用促す
自治体割引はGoToの代わりに各地で導入。政府も財源を補助しているが4月中旬以降、全国的な感染拡大で中断が続出した。大分県は今月14日、感染が落ち着いたとして、宿泊代金を半額にするなどの県民向け割引の受け付けを再開。事業者の経営は苦しいが、担当者は「当面は県内だけでしのぐしかない」と話す。
福井、徳島各県なども再開。宮崎県は約2カ月遅れで21日に事業を始めた。飲食や土産購入用クーポンも発行し、分散利用を促すため平日の宿泊者には額を上乗せする。宮崎観光ホテル(宮崎市)の兵頭大樹副室長は「予約の電話が鳴りやまない」と歓迎する。
宮城県は、宿泊に使える5千円分の前売り券を半額で県民に販売。泊まれるのは10月以降だが「資金不足の事業者に早く現金を行き渡らせたい」(担当者)という。
五輪後目指す
ただ、県内旅行は集客効果が限られ、GoTo待望論も。岡山県のホテル経営者は「昨年の危機を乗り切れたのは、GoToで広域から客を呼べたため」と説明する。
政府はまず自治体割引で近場旅行を増やし、東京五輪・パラリンピック後の秋以降にGoToを再開するシナリオを描くが、時期は流動的だ。
観光庁の蒲生篤実長官は16日の記者会見で、再開はワクチン接種拡大と全国の感染状況改善が必要と指摘。国土交通省幹部は「再開時期を間違えて感染が広がれば批判にさらされる」と漏らす。
検査付きツアー
もっとも、夏休みの遠出旅は需要が戻りつつある。全日本空輸によると、7月下旬の4連休の国内線予約は昨年比2倍。ピーク日には、GoTo実施中だった昨年11月並みの10万人以上を見込む。背景には進むワクチン接種と長引く旅行自粛の反動があるとみられる。
業界は受け入れ態勢づくりを急ぐ。神戸市の有馬温泉観光協会は今月21日、旅館、土産物店の従業員らにワクチン職場接種を開始。山形県の天童温泉協同組合は8月下旬までに関係者約1200人の接種を終える目標で、理事長の山口敦史さんは「安心して観光を楽しんでもらえる」。
国内ツアーなどを手掛けるワールド航空サービス(東京)は4月から出発前に郵送でPCR検査を実施、陰性確認を参加条件としている。松本佳晴社長は「(申し込みが)かなり伸びている。ありがたい方向にかじが動き始めた」と強調する。
ただ「検査同意手続きや結果送付など負担は大きい」(中堅旅行会社社長)との声も聞かれ、普及には課題もある。














