770年、天武天皇の皇統を継ぐ称徳女帝が皇嗣を決めずに死去し、天智天皇の孫で数え年62歳の白壁王が即位して光仁天皇となった。白壁王は聖武天皇の皇女、井上内親王との間に既に他戸王をもうけており、中継ぎの男帝だったと言えよう。

 ところが772年、井上は光仁への呪(じゅ)詛(そ)(呪い)に関わったと...