新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、接種に必要な希望量が届かないとして、自治体による予約ストップなどの動きが止まらない。ワクチンの供給減に先行きが見通せなくなり、不安が連鎖。菅義偉首相が掲げる「10~11月の接種完了」にも暗雲が垂れ込める。スピード重視で突き進んできた事業は、大きな曲がり角を迎えている。
「加速というよりスピードをいかに維持するか」。河野太郎行政改革担当相は6日の記者会見で、先週末の会見に続き、希望量の配送を求める自治体に理解を求めた。同時に、自治体に配送する量は「7、8、9月は、2週間ごとに1万箱(1170万回分)を配分する」と明言した。
全国で計「1万箱」という数字は、今月1日に7月の後半の2週間分として示した配送量とほぼ同じで、神戸市など多くが予約停止を表明する事態につながった経緯がある。河野氏は6日の会見で、1万箱を大きく超える量の配送を求める自治体の「淡い夢」(首都圏の自治体関係者)を打ち砕いた格好だ。
国は、各自治体に高齢者分を大きく上回るワクチンを配送しており、まだ打っていない「市中在庫」が約4700万回分(約2350万人分)あると見込む。
課題は、具体的にどこに「在庫」があるか判然とせず、都道府県を通じた自治体間のワクチン融通も十分に機能しているとは言えない点。島根県内の自治体が、県に融通の調整を打診すると「どこの自治体も余っていない」などと言われた。
7月以降に配られるワクチンの使い道は、8月からの64歳以下(高齢者の約2倍の対象者数)に主に充てられる想定だ。加えて、国の接種会場拡大路線に従って、自治体は会場を増設し「ひと月前は2万カ所。今は5万6千カ所もある」(河野氏)という状況。1日当たり打てる能力が最大限高まった中での減量で、出ばなをくじかれた。
怒りは収まらない。6月30日に予約受け付け延期を発表した明石市の泉房穂市長は「ワクチンが来ないことには、いくら会場設営をし、医療関係者がスタンバイしても接種できない」と訴えた。
予約停止などの影響は北海道旭川市から鹿児島市まで広範囲。仙台、千葉や京都など大都市も少なくない。その一つ北海道釧路市の担当者は、11月までの接種完了について「難しくなるかもしれない」と話す。政府関係者は「そもそも実現が微妙な目標だった。今回のことで年内に終わるかどうか」と懸念を深める。













