日本選手権男子3000メートル障害決勝で足をかけないでハードルを跳び越える三浦龍司=ヤンマースタジアム長居
日本選手権男子3000メートル障害決勝で足をかけないでハードルを跳び越える三浦龍司=ヤンマースタジアム長居

 三浦龍司の代名詞とも言える「スパート」が十二分に発揮されたレースだった。

 五輪出場を決めた日本選手権男子3000メートル障害決勝。残り1周になる直前、水(すい)濠(ごう)を越えた後に足を滑らせ2人に抜かれたが、ここから一気にギアを上げた。次の障害でトップに立つと、追いすがろうとする後続を一瞬で引き離した。

 終わってみれば、2位に約4秒差をつけ、自身が5月にマークした日本記録を1秒47上回る圧巻のレース内容だった。

 爆発的なスパートの秘密は、スピードを切り替える際の瞬発力と跳び方にある。

 3000メートル障害ではハードルに足をかけて跳び越える選手が多いが、三浦は大学時代からレース終盤に足をかけない跳び方を取り入れている。独自の跳び方ではないものの、浜田ジュニア陸上教室時代にハードルに取り組んでいたことが、スムーズな体の動きにつながった。

 3000メートル障害で日本歴代2位の記録を出した2020年7月のホクレン中長距離チャレンジ最終戦(北海道千歳市)、日本記録を樹立した5月の東京五輪テスト大会でも後半に持ち味の加速を見せた。

 観客の目をくぎ付けにするスパートは「走りで見せることができる選手」という三浦が目指す選手像とも合致する。

 目指す選手像が形成されるきっかけになったのは、高校2年時のオーストラリアでの合宿。出場した3000メートルで海外選手と競り合っていると、三浦の走りをたたえる英語の場内アナウンスが聞こえてきた。日本人の長距離選手が海外で注目されることが少ない中、自分の走りで日本人選手の存在感を高めたいとの気持ちが芽生え、世界に目を向けるようになった。

 その後の三浦の奮闘は結果的に「マイナー種目」である3000メートル障害のレベルアップや注目度を高めることにもつながった。

 6月の日本選手権では三浦を含む計3人が東京五輪参加標準記録を突破。「この2年で競技レベルが向上し、応援してくれる人も増えていると思う」と実感を込めて話す。

 日本選手権の優勝タイム(8分15秒99)はリオデジャネイロ五輪の5位に相当するタイム。観客を魅了するラストスパートが東京五輪でも見られれば、表彰台に上がることも夢ではない。

 (敬称略)

 (報道部・藤原康平)