江の川の支流、八戸川があふれ水につかった、田畑や住宅=江津市桜江町小田(小型無人機で撮影、資料)
江の川の支流、八戸川があふれ水につかった、田畑や住宅=江津市桜江町小田(小型無人機で撮影、資料)

 想定外の事態も起き、状況が急展開する災害時の避難は、行政の指示に頼るばかりでなく、住民自らの判断や行動が重要になる。島根県内の水害では、避難所に向かう途中に流されて亡くなった例もある。過去にたびたび被災した江の川流域の住民は建物の2階以上への「垂直避難」を含め、地域の実情に合う避難方法を定期的に情報共有しており「避難所が全てではない」と警鐘を鳴らす。 (広木優弥)

 江の川や支流が氾濫した2020年7月の豪雨で、江津市桜江町川戸地区には261世帯531人に避難勧告が出た。避難所に避難したのは121人と2割だが、平日の昼間で、若者が仕事に出ていたり消防団活動に当たったりしていたことを考えると「かなり避難率は高かった」と川戸地域コミュニティ協議会の本山正博事務局長は分析する。

 自宅2階に垂直避難したり、地盤が安定した親族宅に身を寄せたりした住民もおり、実際に避難行動を取った住民は、もっと多かったとみている。

 数年に一度のペースで水害に遭う川戸地区では、自治会や集落ごとに避難方法を定期的に検討。道路が冠水しやすい地域では垂直避難を推奨することもある。本山事務局長は「避難所に行くことが全てではない。事前に準備し、いざというときにすぐに動けるようにすることが重要」と説く。

 江の川流域で同様な備えをする地区はほかにもあり、特に避難に適す場所が限られる江津市桜江町内で盛ん。避難のタイミングも水位を見て独自に判断する例がある。

 島根県防災危機管理課によると、06年7月の豪雨では、出雲市内の家族3人が高台の自宅から避難所に車で避難する途中、川に転落し亡くなった例がある。

 松村博弘第2防災グループリーダーは「まずは安全な地点に逃げることが大切だ。避難指示が出ればもちろん、危険と思えばためらわず避難してほしい」と指摘。日頃から自宅周辺の危険箇所や避難先の把握など事前の準備を行い、柔軟で迅速な避難行動を取るよう呼び掛ける。