高齢者の接種率の推移
高齢者の接種率の推移
高齢者のワクチン接種どうなったら完了?(似顔 本間康司)
高齢者のワクチン接種どうなったら完了?(似顔 本間康司)
高齢者の接種率の推移
高齢者のワクチン接種どうなったら完了?(似顔 本間康司)

 新型コロナウイルスワクチンの高齢者接種は、政府が掲げる7月末完了の期限が迫る中、打ち終えた人数が積み上がってきた。それぞれの自治体が難題だった医師や会場の確保に取り組み、接種能力を高めたことが大きい。ただ、国が強調する「完了」の定義は、実際はあいまいだ。実現に向け、「大盤振る舞い」でワクチンを配送したツケにも直面している。

 

 菅義偉首相は8日の記者会見で、自らが掲げた通り、希望する高齢者の接種が今月末で完了の見通しだと明言。「東京の感染者に占める高齢者の割合は、5%程度まで低下している」とワクチン効果もアピールした。

 国の集計に基づくと、今月末までに65歳以上の7割超が2回目のワクチンを打ち終える見込み。

 首相が目標を打ち出したのは、4月23日だ。米ファイザー製ワクチンを5~6月に「惜しげもなく」(政府関係者)配って打つのをせかす。各自治体は、会場数を想定より増やすなど対応したことで事業が加速した。

 現在は一転、態勢を拡充した自治体のワクチン需要に供給が追い付かない。予約の受け付け停止などが相次ぐ中、国は「前に配ったものが在庫として自治体にある」と開き直り気味だ。

 

 自治体任せ

 高齢者分に関し何をもって「完了した」とするのか。河野太郎行政改革担当相は「定義はない。自治体に『だいたい終わりました』と言ってもらうことになる」と自治体任せが鮮明だ。全国知事会の飯泉嘉門会長(徳島県知事)は、そもそも国が言い出した点を念頭に「具体的で客観的な基準を例示して」と訴える。

 都道府県庁所在の47市区への取材(6月末~7月1日)では、ほとんどの市区には「高齢者の想定接種率」がある。70~100%とばらつく。横浜市(想定80%)や奈良市(同70%)などは、この想定率をクリアしたら目標達成と捉える。

 

 圧力色濃く 

 数値で判断するとした自治体は一部で、多くは明確な基準があるとは言いにくい。甲府市や岐阜市は接種会場の予約に空きが出て「予約が入らなくなったら」達成とみなす。打つのを悩む人がいて空きがあるのか、完了かは本来微妙だ。

 福島市は「一定期間内に予約した人が打ち終わったら」が目安。キャンセルも想定されるが、ほぼ完了するのは確実だ。

 大分市は、想定接種率や予約の入り具合など複数の状況を勘案し決める。実態を見て現実的に判断しようというわけだ。新潟市は、国が基準を示すべきだとして「定義を設けていない」という。

 解釈の余地を残す判断基準には、国が目標を達成させようと、自治体に影響力のある総務省を使うなどして「圧力」をかけた影響も色濃い。