島根県隠岐の島町久見地区に伝わる県指定無形民俗文化財「島後久見神楽」が15日夜から16日早朝まで、地区の伊勢命(いせみこと)神社で奉納された。毎年恒例の夜通しの舞は途中で雨に降られたが、最後まで予定通りの15演目が披露され、地区内外の人が声援を送った。(鎌田剛)
16歳から89歳までの地区住民や出身者でつくる島後久見神楽保持者会(岩室裕造会長、12人)が舞と奏楽を披露した。15日午後9時半に始まり、「巫女(みこ)舞」や「八神(はっしん)」といった前座七座(ぜんざしちざ)と呼ばれる儀式舞で舞台を清めた。
日付が変わって16日未明になると、観客を盛り上げる要素の強い「入れ舞」に移り、えびすが小魚を餌にして大きなタイを釣り上げる「恵美須(えびす)」が会場を沸かせた。
鬼の仮面を付けた舞手が背を向けながら太鼓をたたく「切部(きりべ)」、ござと扇子を手に舞う「御座舞(ござまい)」といった独特の演目が続き、長い幕あいに観客から「夜が明けるぞ」とせかす声が上がり、周囲を笑わせた。
男性4人による「剣舞」と白装束の女性による「神納め」で締めくくった。夜が白む中、最後まで残った20人の観客から「ありがとう」と感謝と拍手が会員たちに送られた。
全演目を友人2人と見た西郷中3年の平田理貴斗さん(14)は「鬼と戦う舞が面白かった。神楽に加わりたい」と話し、岩室会長は「場数を重ねてきた。迫力のある充実した舞になった」と総括した。