恋愛はその勝者に目を奪われがちだ。でも敗れた人の態度、発言として文学史に残るのは、大杉栄に妻の伊藤野枝を奪われた辻潤だと思う。

 大杉は妻・堀保子、新聞記者・神近市子、野枝との4角関係の中で自由恋愛を提案。身勝手な案の果てに、1916(大正5)年1...