「お盆を過ぎるとクラゲが増える」という。お盆時期の海水温はクラゲにとって適温とされ、どんどん成長するからだ。島根、鳥取両県は全国的に見ても注意が必要な地域で、特に傘の直径が3センチほどの小型のアンドンクラゲに注意が必要だ。有識者は「いる前提で落ち着いて対処してほしい」と話す。もし、刺されてしまったときにはどうすればいいのだろうか。
 

触手や傘の表面に刺胞をもつアンドンクラゲ。傘が透明で海水浴中には発見しにくい(しまね海洋館アクアス提供)


 皆生ライフセービングクラブ(米子市皆生温泉3丁目)の野嶋功理事長によると、刺されたと思ったときにまずすべきは(1)落ち着いて陸に上がる(2)海水で洗い流す(3)患部に触らないーの三つが大原則という。その後、触手が見える場合はピンセットなどで取り除き、ライフセーバーに相談して処置すれば多くの場合1時間程度で治まるという。

患部を海水で洗い流す様子を実演する野嶋功理事長。直接触れないことが重要という=米子市皆生温泉3丁目、皆生海遊ビーチ


 症状はクラゲの種類や刺された人の体質によって大きく異なるが、複数回刺されると重大なアレルギー症状の「アナフィラキシーショック」を起こす恐れがある。意識を失って溺れる原因になるため、まずは海から上がることが肝要だ。

 刺されたときにやりがちなのが、患部をさすったり、かいたりといった行為。クラゲの触手などにある刺胞を刺激して毒針を出すことにつながるため、絶対にしてはいけない。

 淡水での洗浄も浸透圧の違いで毒針の射出を促す。酢をかける民間療法もあるが、クラゲの種類によってはかえって悪化させるため、海水で洗い流すのが最善だ。
 

アンドンクラゲに刺され、腹部の右側が大きく腫れた海水浴客(皆生ライフセービングクラブ提供)


 民間気象会社「ウェザーニューズ」が2023年に実施したアンケートによると「クラゲに刺されたことがある」と答えた人の割合は、島根県が57%で全国1位、鳥取県も51%で福岡、長崎両県と並んで2位タイだった。山陰両県は全国的に見ても注意が必要な地域と言える。

 実際、皆生ライフセービングクラブが活動する皆生海遊ビーチでは、7月初旬から8月末の約2カ月間で毎年数十から100件近くの被害報告がある。例年来場者とクラゲが共に増える8月中旬ごろに多くなるという。

 刺された患部を洗い流した後の対処は、症状によって異なる。大きく腫れている場合はお湯をかけて毒素を不活性化させ、それほどひどくない人には氷袋で冷やして痛みを和らげる。
 

傘の赤いしま模様が特徴のアカクラゲ


 刺されないための行動も必要だ。被害が最も多いアンドンクラゲは、透明で見つけづらく、触手が30~60センチと長いため回避が難しいが、赤いしま模様が特徴のアカクラゲは容易に見つけられる。

 また、傘の直径が30センチを超えるエチゼンクラゲや、猛毒のカツオノエボシの死骸がまれに漂着することがあり、見つけたときやそれらしく見えるものには触れないようにしたい。

 野嶋理事長は、一日の来場者全体に対して刺される人の割合は数%に過ぎないとしつつ「海水浴は自然との共生の一つ。いるという前提で対応してもらえれば嫌な夏の思い出にはならない」と話した。

 (中村和磨)