「無観客が望ましい」とした提言について記者会見する尾身茂氏=6月、東京・内幸町の日本記者クラブ
「無観客が望ましい」とした提言について記者会見する尾身茂氏=6月、東京・内幸町の日本記者クラブ

 東京五輪がほとんどの会場で無観客で開かれることに医療の専門家は「新型コロナウイルスの感染拡大のリスク低減につながる」と一定の評価を示す。だが、既に東京を中心とする首都圏では感染拡大が鮮明で、医療提供体制が再び窮迫する事態を危惧している。

 政府の対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志26人は6月18日の時点で「無観客が望ましい」とする提言を発表していた。インド由来のデルタ株への置き換わりによって7月から8月にかけて感染が拡大するのはほぼ確実とみていた上に、社会的注目度が高い五輪が観客を入れて開かれれば、人の移動が活発になり、流行の勢いが増すと考えたためだ。

 営業時間短縮や不要不急の外出の自粛などを要請されている市民が、試合に熱狂する観客の姿をテレビで見ると、矛盾したメッセージととらえて感染対策に協力しなくなる恐れもある。

 専門家の予想通り、東京の新規感染者数は増え続け7月14日、約2カ月ぶりに千人を上回った。これから夏休みやお盆を迎え、さらに感染拡大のリスクが高くなる。

 提言に関わった医師は、無観客開催を「歓迎する」と評価する一方で「日々、第一線の医療関係者は業務量が増えており、今後の感染拡大への危機感が強まっている」と強調。尾身氏は「去年の暮れごろから人々の協力が得られにくい状況で、国と自治体のリーダーが一体感のあるメッセージを出すことが必要だ」と訴えている。