東京五輪は大半の会場から、選手を勇気づける歓声が消える。中でも様変わりしそうなのは、国際オリンピック委員会(IOC)が目玉の一つとして初採用したスケートボードやバスケットボール3人制という「都市型スポーツ」だ。観客を巻き込んだ会場全体の盛り上がりが期待されただけに、選手から「本当につらい」との声が上がる。
DJと音楽、歓声を背中に浴び、壁のホールド(突起物)に手を伸ばす―。スポーツクライミングの本来の姿は新型コロナ禍で一変した。男子の楢崎智亜(TEAM au)は無観客の大会を経験し「あと1センチ、2センチ届かない時に声援に背中を押してもらえたんだな」と観客がいることの価値を痛感した。
3月のバスケットボール3人制の日本選手権もBGMや実況はあったが、観客は不在。保岡龍斗(秋田)は「歓声が上がれば相手の対応も変わり、狙いどころも変わる」と競技や戦術面への影響を指摘した。
「都市型」以外も状況は同じ。8大会ぶりの五輪出場となるハンドボール男子日本代表のダグル・シグルドソン監督は「ホームアドバンテージはなくなる。影響は大きい」と話す。一方で、ラグビー7人制男子の藤田慶和(パナソニック)は「テレビの前からの応援はすごいはず。アドバンテージとしてやりたい」と前向きに話した。
1988年ソウル五輪の競泳男子100メートル背泳ぎで優勝した鈴木大地さんは、歓声の大きさでライバルと競り合っていることを感じ取り、最後の力を振り絞ったと振り返る。「選手と観客がエネルギーを与え合うのがスポーツ。仕方ないが無観客は残念」と話した。 新型コロナウイルス禍の東京五輪は、大半の会場が無観客で開催される。あるはずだった大声援がなくなる選手たちは、どんな気持ちで戦いに向かうのか。ボランティア、感染症の専門家、観光業者もそれぞれの立場で異例の大会を迎える。













