山陰両県を襲った記録的な豪雨から19日で1週間が経過した。広範囲で被害が発生した雲南市内は計55路線の県道と市道で通行止めが続き、三刀屋町鍋山地区では3世帯8人が孤立状態のままだ。住民は土砂崩れで崩落した道路跡を歩いて行き来し、不自由な生活を送る。 (清山遼太)
「軽自動車が1台でも通れる小さな道があれば違うのだが」
19日午前、出雲市境に近い鍋山地区で長靴姿の秦美幸(よしゆき)さん(79)=三刀屋町里坊=が首に掛けたタオルで汗を拭きながら、土砂に覆われた斜面を踏み外さないようゆっくりと歩みを進めた。
もともとは家族4人で住む自宅につながる唯一の生活道路があった場所だが、12日朝からの局所的な豪雨で崩落。斜面が崩れて道路は跡形もなくなり、約50メートルにわたって崖のような状態となった。
自宅との間を行き来するには車を約1キロ手前の道端に止め、片道15分ほど歩く必要がある。一歩誤れば崖下に転落しかねない恐怖と向き合う。
足が思うように動かせず、自宅で待つ妻のタズコさん(74)のことも気がかりだ。
所長を務める鍋山交流センターの昼休みに一時帰宅して食事を作ることが日課だったが「続けていては倒れてしまう」と家族に止められた。今は仕事を休んでいる長男の健治さん(51)に任せるものの、いつまで頼れるか分からない。
タズコさんは週1回のペースで訪問看護を利用しており、救急車や消防車がたどり着けない現状にも不安が募る。
12日は記録的短時間大雨情報が発表され、市中心部を流れる三刀屋川の支流が氾濫。市内で民家8棟が全半壊し、11棟が床上浸水の被害に遭った。
幸いにも自宅は無傷だったが「大変なのはむしろ豪雨が過ぎ去った後」と秦さんの顔には疲労の色が濃くにじむ。
市によると、崩落箇所は19日午後に迂回路の設置工事に着手した。完了すれば孤立状態は解消するが、元の状態に戻る本復旧の時期は見通せない。














