大相撲の元立行司で、秋場所を最後に定年退職した第38代木村庄之助の今岡英樹さん(65)=出雲市出身=が山陰中央新報社の取材に応じた。約50年の行司人生を振り返り、故郷への思いや新たな島根県出身力士への期待も語った。安来市であったトークショーでの言葉も交えて紹介する。(聞き手は出雲総局・佐野卓矢)

 ー行司人生を振り返って今の心境は。

 「力士は白星か黒星の世界だが、行司はプラスが付かず黒星だけ、マイナスだけが付く人生。日々精進してここまできた。失敗が責められる仕事なので、さみしいがほっとしている。プラスが付かない中でも、一つ失敗したら二つ成功しようという気持ちで、その繰り返しがプラスを呼ぶという思いでやってきた。人が認めてくれなくても、神様は見てくれる」

 ー土俵外でも大変な仕事だった。

 「行司の仕事は土俵で勝負を裁くだけではない。お相撲さんとファン、企業と相撲界、人と人の間に入って、人同士を結びつけるのが一番大変な仕事だ。意見が対立する両者の間に立ってまとめるのはつらいが、厳しく師匠や行司さんたちが指導してくれたおかげで答えが出て、ここまで務められた」

最後の土俵に立つ第38代木村庄之助にねぎらいの横断幕を掲げる人たち=両国国技館


 ー行司を目指した原点は何だったのか。

 「小学生のとき、みんな『巨人・大鵬・卵焼き』が好きだった。当時、午後6時までテレビでアニメをやっていて、それが終わった後、大鵬を見ようと...