開発した簡易型測定装置で食材の硬さや粘り気を調べる関係者=松江市東生馬町、東部島根医療福祉センター
開発した簡易型測定装置で食材の硬さや粘り気を調べる関係者=松江市東生馬町、東部島根医療福祉センター

 食材をのみ込む嚥下(えんげ)機能が低下した人に提供する嚥下食の安全性向上に向け、東部島根医療福祉センター(松江市東生馬町)が島根県内の教育機関や研究機関と連携し、食材の硬さや粘度を簡易測定する装置を開発した。多くの医療・介護施設では調理師らの経験に基づいて作るため、患者らに提供するペースト状の嚥下食のとろみや硬さにばらつきがある。今後、製品化を担うメーカーを募って普及を図り、嚥下食の品質を向上させたい考え。

 嚥下機能が低下した人は、食材の粘り気がないとむせたり、逆に強過ぎると喉にひっついてのみ込めなかったりするため、水分や増粘剤を調整して食事を提供する必要がある。

 嚥下食の粘り気などは国が目安値を設けているが、既存の測定装置は大型で、数百万円程度の費用がかかるため、導入のハードルが高い。装置がない場合は、調理師たちが試食し経験に基づき判断するため、ばらつきがあるのが課題だった。

 同センターでは、簡易に使える測定装置を開発するため、2021年に松江工業高等専門学校(松江市西生馬町)に打診。島根県産業技術センター(同市北陵町)の助言も受けて共同開発に着手した。

 試作機(高さ28・5センチ、幅12センチ、奥行き16センチ)は、対象となる嚥下食をセンサーに接触させることで、「硬さ」「かたまりやすさ」「粘り気」の3項目を測定できる。計測時間は10秒程度で、食品サンプルをセットしてボタンを押すだけという簡単な操作で、誰でも測定できる。測定値は装置の画面に表示し、確認できる。

 発案した同センターの管理栄養士、伊藤有紀さんは「食事を作る側が自信をもって提供できる」とし、伊達伸也院長は「患者や入所者にとって食事は楽しみの一つだ。安心して食べてもらうために全国に広がってほしい」と話した。

 装置はデザインなどを改良後、20万~30万円程度で販売できる製造メーカーを島根県内で募り、量産化を目指していく。(佐野翔一)