新学年の教室では自己紹介が定番だ。そんな時は、谷川俊太郎の詩「自己紹介」に登場してもらうとよい。国民的な詩人である「私」をユーモラスかつシニカルに語るこの詩は、初対面でぎこちない学生たちの口を滑らかにする。

 なぜか。それは、この詩が多声的だからだろう。仮に一人でいるときでさえ「私」は常に複数であり、言葉が常に対話であることを、この詩は伝える。先秋、...