下水道管の緊急点検を行う松江市上下水道局の職員ら=5日午後9時10分、松江市東朝日町
下水道管の緊急点検を行う松江市上下水道局の職員ら=5日午後9時10分、松江市東朝日町

          
下水道管の緊急点検を行う松江市上下水道局の職員ら=5日午後9時10分、松江市東朝日町

 埼玉県八潮市であった下水道管の腐食が一因とみられる道路の陥没事故で、島根県内で管路を再調査する動きが出ている。事故を受け、国土交通省が事故現場と同様の管路を持つ自治体に緊急点検を要請。県内に該当する管路はないが、5日時点で県内8市のうち松江、益田、雲南3市が自主的に点検した。ひとたび事故が起きれば大惨事になるだけに、管路の状況に神経をとがらせている。

 陥没事故は1月28日午前に発生。直径10メートルの穴に車両が突っ込み、5日時点で運転手の男性の安否が分かっていない。道路下の下水道管内で、汚水から出た硫化水素が空気に触れて硫酸となり、コンクリート管が腐食した可能性がある。国交省は直径2メートル以上で1日当たり30万トンを処理できる下水道管の緊急点検を全国の自治体に要請した。

 

 島根県によると、市町村管理分の公共下水道管は総延長約2800キロ(2023年度時点)。基本的に細い管はビニール管が多いほか、交通量の多い市街地や住宅地は外圧に強いコンクリート管が敷かれている。

 県内の公共下水道管の4割を管理する松江市は5日夜、松江中央郵便局(松江市東朝日町)前の道路地下6メートルにあるコンクリート管(直径1・5メートル)の約130メートルを調査。マンホールからテレビカメラを挿入して内部の腐食具合を確認し、補修の必要性を確かめた。

 同じ場所で実施した2020年度の定期点検では骨材の露出が判明し、5500万円を費やして約35メートル分を補修した。市上下水道局の杉谷雄二上下水道部長は「交通量の多い場所であり、市民の安心にもつながる」と再点検の必要性を説いた。

 益田市も1月30日までに腐食の可能性があるマンホール4カ所を点検。雲南市も同31日に木次町中心部にある直径80センチのコンクリート管やビニール管を調べ、いずれも目立った腐食や破損がないことを確認した。

 ほかの5市は下水道法で定められた5年に1度の点検や、毎年の独自調査で道路の陥没につながる腐食や損傷がないことを確認しており、事故を受けた調査の予定はないという。

 松江、出雲、安来の3市の下水を集めて処理する島根県の流域下水道(全長74キロ)は、松江市や安来市の一部で直径2メートルのコンクリート管があるが、30トンの処理能力はなく、緊急点検の対象ではない。県下水道推進課の中村伸二課長は「安全性は確認しているが、八潮市の詳細な原因調査を注視し、対応の必要性を検討していく」と述べた。

(佐々木一全)